シュレーダーとブッシュ・カメラの前だけの笑顔
9月24日にニューヨークでシュレーダー首相とブッシュ大統領が、イラク戦争後初めて会談したが、二人の笑顔はまるで仮面でもかぶったかのようで、ぎごちなかった。第二次世界大戦後、米国の最も忠実な同盟国だったドイツは、イラク攻撃に正面から反対したため、ブッシュ大統領の強い怒りをかい、米独関係はここ数十年間で最も深刻な危機に直面していた。
今回の会談は、首脳同士が話もしないという不健全な状態を打破し、新しい関係を探るための第一歩として行われたものだが、内容的には貧しかった。イラクでの本格的な復興支援を求めるブッシュに対して、シュレーダーは「イラクの警察官を研修させる準備がある」と発言する程度でお茶を濁した。ドイツは、国連にイラク統治と復興の主導権を握らせる決議が採択されるまでは、復興支援をするつもりはないのだ。
しかも、イラクの治安は日に日に悪化しており、一日に米軍に対して行われる攻撃の件数は、ここ数週間で二倍近くに増えて22件になっている。国連は現地職員の安全が確保できないとして、イラクで働く職員の数を減らし始めている。米軍や国連に対する攻撃には、サダム・フセインの支持者やスンニ派の過激勢力だけではなく、外国から侵入したテロリストらも加わっていると言われる。
つまり、米軍はイラクに侵攻することによって、この国でテロリストが活動できる混乱状態を自ら生み出してしまったのである。暴君だったサダム・フセインが権力の座から追われたのは悪いことではないが、電気や水道といった基本的なインフラも復旧していないという混沌は、イラク市民の米国への怒りを深めるばかりだ。あるNGOの調べによると、イラク戦争が始まってから今年8月までに、イラク市民の死者は6113人に達している。イラク人の結婚式で参列者が景気づけに空へ向けて銃を撃ったところ、米軍のパトロール部隊が敵の攻撃と勘違いして、住宅街で銃を乱射し、市民が殺傷されるという事件も起きている。
米軍兵士のイラク駐留期間も半年から一年に延長され、予備役や州兵の召集も始まろうとしている。こうした危険な状況では、仮に国連決議が採択されても、現地に兵士を送って治安回復にあたらせようという国がどれだけあるだろうか。毎月49億ドル(約5880億円)という天文学的な駐留費用の重圧も、ブッシュの肩にずっしりとのしかかる。米国はこの泥沼からどのようにして抜け出そうというのだろうか。
2003年10月10日 週刊 ドイツニュースダイジェスト掲載