米独関係・遠い雪どけ
イラク戦争以降の米独関係を象徴するような、凍てつく冬空の下、ブッシュ大統領が2月末にドイツのマインツを訪問し、シュレーダー首相と会談した。
両首脳は、「イラク戦争についての意見の相違は、過去の物であり、将来を見つめよう」という姿勢を強調し、マスコミに対して、関係の改善をアピールしようとした。ライス国務長官がかつてイラク戦争に対する各国の反応をめぐって、「フランスには罰を加え、ドイツは無視し、ロシアは許す」と発言したことがあったが、今回の訪独ではうって変わりブッシュ・ライスともに、感情的なわだかまりを見せまいと必死の努力をしていた。
ブッシュ氏がドイツとの関係を改善しようとしている背景には、さしもの超大国といえども、イラクを単独で再建することは不可能であり、欧州諸国の協力が不可欠だという認識があるに違いない。
そのことは、2月22日にブッシュ氏がブリュッセルを訪れた時に、午前中にはNATO加盟国首脳との会議に出席し、午後にはEU(欧州諸国)加盟国首脳と会ったことにも現われている。戦争には強い米国も、戦後処理についてはEUの力が必要なのだ。
だがそこは頑固なドイツ人のこと。簡単には過去を水に流さない。ブッシュ氏とシュレーダー氏は、和やかな雰囲気を見せようとしていたが、個人的な気安さ、親しさは感じられなかった。
特にシュレーダー氏は、過去にプーチン大統領やシラク大統領らをハノーバーの自宅に招いてもてなしたのに対し、ブッシュ氏を自宅に招待しなかった。国連憲章を無視してイラクに侵攻した米国に対して、すんなりと融和の姿勢を見せまいという決意が感じられる。
ブッシュ訪独に先立ち、シュレーダー氏がミュンヘンの安全保障会議で代読させた、「NATO(北大西洋条約機構)は、もはや欧米が戦略的に重要な問題を一義的に話し合う場ではなくなった」という批判にも、米国に対する不信感が込められている。
この発言には、当初内外から強い批判の声が上がったが、中東の地政学的なバランスを大きく崩すイラク侵攻や、イランの核問題への対応など、欧州にとって重要な問題がNATOで話し合われていないことは事実であり、最近では「シュレーダー発言には、的を射ている部分もある」という意見も出ている。
独仏は、イラク復興支援のために将兵を派遣することは、頑として拒んでおり、米欧間の亀裂は、今も深いのだ。
がっちり肩を組み、カメラに向かって微笑む両首脳の映像とは対照的に、米独が本当の雪どけを迎えるまでには、まだかなりの時間がかかりそうだ。
週刊 ドイツニュースダイジェスト 2005年3月5日