ドイツの電力料金高騰と、監視機関設立

私はドイツの電力を使って生活しているが、最近一消費者としてがっかりさせられる出来事があった。私は2000年末に、電力の購入先を、ミュンヘンの公営地域電力会社から、電力販売会社YELLOに切り替えた。同社のウエブサイトで料金を計算してみると、一年間で約2万5000円安くなるはずだったからである。

*料金が30%上昇

私は去年12月にYELLOから受け取った請求書で、これまでの電力料金を比較してみた。2001年12月からの1年間の電力消費量は2395キロワット時で、払った料金は税込みで390ユーロ(約5万700円)。ところが、電力消費量は前年に比べて7%減っているのに、支払った料金は6%増えているのだ。キロワット時あたりの電力料金は、16セントで、前年に比べて14%も上昇していた。3年前に比べると30%の上昇であり、これでは電力会社を変えた意味がない。

*主犯は環境関連税

キロワット時あたりの電力料金が上昇した一つの理由は、シュレーダー政権が導入した環境税、再生可能エネルギー促進税などの税率が、毎年上昇していることである。同時に、1998年の電力市場自由化直後の価格競争にブレーキがかかり、電力会社は発電・送電料金も3年前から引き上げつつある。ドイツ電事連(VDEW)の調べによると、年間消費量3500キロワット時の家庭で、環境関連の税金が、過去2年間で51%も上昇しただけでなく、発電・送電料金も12%引き上げられている。国の環境政策が原因で、電力料金が引き上げられることは、電力会社にとっては、同時に発電・送電料金をこっそり引き上げても、目立たないという利点がある。

YELLOの電力料金が値上がりしたのも、こうした市場の動向を反映している。主にシュレーダー政権の環境政策のために、自由化の恩恵が消費者に還元されていないのだ。これでは、電力会社を切り替えた個人世帯が、5%に満たないのも、うなずける。

*苦戦する新規参入者

自由化以来ドイツでは、9社の新しい電力供給会社が参入したが、その内アレス、カヴァット、リバ、ゼウスの4社が倒産した。他にも3社が顧客リストを他社に売却することを検討したり、新規の顧客の受け入れを停止したりしている。また個人顧客の受け入れを停止し、企業だけを相手にしている新規参入企業もある。その中でYELLOは善戦しており、毎年2800キロワット時の電力を消費する家庭の電力料金を比較した調査によると、YELLOはRWEプラスに比べて13%安くなっている。それでも、競争の鈍化によって同社も徐々に電力料金を引き上げざるを得なくなっているのだ。

*2004年に監視機関設立へ

RWE,エオン、ヴァッテンファルのような大手企業は、他社の買収や公営地域電力会社への資本参加によって、影響力をますます強めている。3月24日に、ドイツ政府が、託送料金などを監視し、電力市場の自由化を促進するための官庁を2004年に設立することを決定した背景には、託送料金の引き上げや企業の合従連衡によって競争が阻害されているという、緑の党や市民からの批判があったものと見られる。連盟間合意によって、監視機関の設置に強く反対してきたドイツの電力業界には、大きな打撃である。

電気新聞 2003年4月16日号 掲載