ベルリン中央駅の光と影

今年5月末にオープンした、ベルリン中央駅は、ヨーロッパで最大の駅の一つである。先週プラットフォームに降り立って、最新の建築技術の成果に感心した。

* 総工費7億ユーロ

最上階のSバーンと長距離列車のプラットフォームは、東西321メートルにわたって伸びるガラスの屋根で覆われている。まるで飛行船ツェッペリンの格納庫を思わせる巨大さだ。最近のドイツの建築ではガラスを多用するのが流行しているが、この駅でも自然光が取り入れられて、晴天の日には温室の中にいるような快適さである。ベルリン中央駅は、五つの階に分かれており、最上階から37メートル下にあるプラットフォームにも、長距離列車が到着しているのが見える。高さ27メートルのメインホールから、南を見渡すと、連邦議会議事堂と、連邦首相府の屋根が見える。私のような外国人には、統一ドイツの首都ベルリンにふさわしい駅に思われる。建設に11年の歳月、約7億ユーロ(約980億円)の総工費がかかったというのも、うなずける。

* 交通の中心としては未完成

1990年の初めに建設が計画され始めた時には、1日500万人の乗降客を見込んでいたというが、この法外な数字は、当時の人々がいかにドイツ統一の喜びに有頂天になっていたかを示している。ドイツ鉄道会社は、毎日30万人がこの駅を利用すると見ているが、緑の党の議員らの間では「せいぜい10万人ではないか」という冷めた見方も出ている。その理由の一つは、この駅がベルリンの交通の中心としては、未完成であることだ。ドイツのどの中央駅にもある市電の停留所がこの駅の前にできるのは、早くても2008年になる。またこの駅は地下鉄網にも完全には組み込まれていない。Sバーンも、東西には走っているが、南北の地域との接続が悪い。ベルリンの他の地区に行くのなら、Sバーンのフリードリッヒ・シュトラーセ駅やハッケシャー・マルクト駅の方が便利だ。

* 駅前は空き地

さらに、ミュンヘンやデュッセルドルフ、フランクフルトなどの中央駅とは違って、ベルリン中央駅の周りには、ホテルや商店がまだ全くない。首都の中央駅から外へ出ると、広大な空き地がひろがっているという場所は、世界中を探しても、ここだけだろう。ベルリンの西側にあるツォー駅周辺の騒がしさと比べると、別世界のようである。この空漠とした雰囲気は、ベルリンがいまだに巨大な工事現場であり、真の首都になるための途上にあるということを、はっきり示している。また中央駅のオープンは、町の重心が、ますます東側に移動していることを象徴している。西ベルリンっ子たちは、「ベルリンの主要駅が、西側のツォー駅から東側に移ってしまって残念だ。これでは、西側の地盤沈下が進むばかりだ」と嘆いていた。ただし私は、クーアフュルステンダムから一歩裏に入った脇道が大好きであり、首都とは思えない静かさが保たれるのは、良いことだと思っている。

週刊 ドイツニュースダイジェスト 2006年6月24日