州議会選挙と旧東ドイツの反逆

 ザクセン州とブランデンブルグ州の有権者たちは、919日の州議会選挙で、SPD(社会民主党)とCDU(キリスト教民主同盟)の二大政党に強烈なパンチを加えた。

特に目立ったのは、
CDUが大幅に得票率を減らしたことである。同党の票の下落率はザクセンで15ポイント、ブランデンブルグで13ポイントに達した。つまり旧東ドイツ市民の怒りは、労働市場改革案(ハルツ4)を導入したSPDだけでなく、法案を支持したCDUにも向けられたのである。

既成政党に失望した人々は、抗議票を左翼・右翼政党に与えた。社会主義時代の政権党の後身
PDSは、具体的な政策プログラムが乏しいにもかかわらず、どちらの州でも得票率を伸ばした。「ハルツ4は、人々を貧しくする。そんな物はごめんだ」という感情的なスローガンが、市民の心をとらえた。

我々外国人にとって衝撃的な現象は、極右政党の躍進である。特にザクセン州では、スキンヘッドなどの過激勢力も含む
NPDが、得票率を前回の選挙の1・4%から9・2%に引き上げ、議会入りを果たした。

長期低落傾向にある
SPDは、あとわずか0・7ポイントで、NPDに追い抜かれるところだった。NPDの州議会進出は、36年ぶりのことである。ブランデンブルグ州でも極右政党DVUが、6・1%と得票率を伸ばしている。

極右政党が躍進した理由の一つは、両党が選挙戦術を調整して、同じ州で戦わず、票の食い合いを避けたことだ。二つの州であわせて26万人の市民が、「ドイツ連邦共和国の憲法制度の廃止」をめざす政党に票を投じたことは、旧東ドイツが統一の後遺症から立ち直っていないことを、はっきり示している。

シュレーダー政権が、
NPDの禁止を連邦憲法裁判所に申請して、却下されたことの責任も問われなくてはならない。失業救済金を廃止して、生活保護と同じ水準まで下げるハルツ4で影響を受ける市民の数は、旧西ドイツよりも、旧東ドイツの方が多い。

東側では、伝統的・穏健な中道政党に対し、生活水準を悪化させる存在として、背を向ける人々が増えているのである。

ケーラー大統領は「東と西の生活水準には、これからも厳然たる格差が残る」と言ったが、政治意識においても、二つの地域を分割する溝は、当分の間消えないだろう。

週刊 ドイツニュースダイジェスト 2004年10月2日