ドイツ野党・CDUの堕落

イツでの最近の世論調査によると、シュレーダー首相への支持率は、18%という低い水準に下がっている。

その最大の原因は、失業問題など、経済政策の失敗だ。シュレーダー氏は、厳しいリストラを前にした、オペルやカールシュタット・クヴェレの社員たちの苦境に、手を差し伸べることもできない。首相に対する有権者の目は今後ますます厳しくなるだろう。

このため、2年後の連邦議会選挙で、シュレーダー氏が率いる社民党(
SPD)と緑の党の連立政権が敗退し、保守党のキリスト教民主・社会同盟(CDUCSU)に権力の座を明け渡すことは、ほぼ確実と見られている。

だが、連立政権でリーダーシップを取るべき
CDUも、A・メルケル党首の指導力に大きな疑問が投げかけられ、不安定な状況に陥っている。たとえば10月中旬には、経済政策のエキスパートであるF・メルツ氏が、議会のCDU会派代表の座を突如辞任した。

社会保障削減など、経済問題が、ドイツの有権者に最大の関心事となっている中、
CDUでこの問題に最も詳しい幹部の離反は、メルケル女史にとって大きな痛手だ。

困った彼女は、かつて内務大臣などを務めた実力派、
W・ショイブレ氏に、メルツ氏の後釜に座って欲しいと要請したが、にべもなく断られた。ショイブレ氏は、CDUを揺るがした不正献金問題で、メルケル女史に煮え湯を飲まされ、全ての要職を退いたのだから、今ごろ助けを求められても、応じるはずがない。

メルケル党首は鉄面皮を装っているが、1週間に2回も面目をつぶされ、党内での影響力に傷がついたことは、否定できない。また
CDUは、トルコのEU加盟に反対しているが、「この問題について、国民投票を行うべきだ」と主張して、ドイツ在住のトルコ人だけでなく外国人を怒らせた。

CDUは外国人の二重国籍取得を認めるかどうかという問題について、反対派市民の署名を集める運動を展開し、ヘッセン州議会選挙で圧勝したことがある。この署名運動については、「外国人の排斥を求める極右政党を思い起こさせる」という批判が出た。その経験にもこりず、今回事実上の「反トルコ国民投票」を提案したメルケル党首の国際感覚の低さには、首をひねらざるを得ない。

提案をあわてて取り下げても、この人に首相の資格が欠けていることを、隠すことはできない。与野党ともに頼りなく、
NPDPDSのような内容のない過激な政党に抗議票が集まるという、不健全な状態には、一刻も早く終止符を打って欲しいものだ。

熊谷 徹

週刊 ドイツニュースダイジェスト 2004年10月30日