どうなる?将来のエネルギー

 

ドイツは、世界でも1年あたりの停電時間が最も短い国の一つ。エネルギーの安定供給が、比較的良く保たれている国なのだ。同時にドイツ人は、世界でも最も環境保護に熱心な国民に属する。このため、原子力発電に対する市民の不信感が根強い。

前のシュレーダー政権に加わった緑の党は、世界の主要経済国では例がない、原子力廃止を実行に移した。

この政策に変更が加えられなければ、2020年頃には、ドイツから原子力発電所が完全に姿を消すことになる。

2005年にエムニード研究所が行った世論調査によると、回答者の70%が、脱原子力政策に賛成している。また75%が、「自分の家の近くに、原子力発電所が建設されるのは、ごめんだ」と答えている。

問題は、発電量の30%近くを供給している原子力を、何によって代替するかだ。

ドイツ政府は風力や太陽光などの再生可能エネルギーの比率を、20%前後まで高めようとしている。しかし、風や陽光は不安定で常に電力を生んでくれるとは限らないので、万一のためのバックアップの発電能力が必要である。

「再生可能エネルギーの信頼性が低いので、補完する発電所が必要だ」ということは、緑の党のエネルギー専門家たちも認めている。

電力業界は、二酸化炭素の排出量が少ない、近代的な石炭火力発電所を建設することによって、原子力や再生可能エネルギーを補完しようとしている。

しかし、去年11月には、大手電力会社
    RWEがザール地方のエンスドルフ石炭火力発電所を更新し、より燃焼効率が良いタイプに変更しようとしたところ、住民投票で市民の70%が反対したため、計画が暗礁に乗り上げてしまった。

またハンブルク近郊のモーアブルクでは、電力会社が新しい石炭火力発電所を建設しようとしたが、監督官庁から許可が下りないため、4月14日に市当局を訴えた。同市の連立政権に加わると見られている左派政党GALは、この発電所の建設に反対している。

つまり、原子力反対運動の次は、地球温暖化とのからみで、石炭火力発電所への反対運動が、ドイツのあちこちで頭をもたげ始めているのだ。二酸化炭素の排出量を減らして、温暖化に歯止めをかける必要があることは、理解できる。

だが、原子力と石炭火力を両方とも廃止して、ドイツの経済力に悪影響は出ないのだろうか。

ドイツ・エネルギー機関(DENA)は、「発電所建設計画に次々にまったがかけられているため、2020年には、発電所・15ヶ所分に相当する発電能力が不足する可能性がある」と指摘している。

住民の反対運動のために、プロジェクトが頓挫することを恐れて、投資家は石炭火力発電所への投資に尻込みするかもしれないというのだ。

ドイツ国民は、電力の安定供給を犠牲にしても、一種の「環境ロマン主義」を貫こうとしているのか。

メルケル政権は、一刻も早く長期的なエネルギー戦略について、社会的なコンセンサス(合意)を作り上げるべきではないだろうか。

週刊ドイツ・ニュースダイジェスト 2008年4月25日