米国はイランを攻撃するか?

ドイツでは復活祭に反戦デモが行われる伝統があるが、今年のテーマは「イランの核開発をめぐる危機」に集中した。

ドイツ市民の間では、「ブッシュ政権がイランの核関連施設を将来攻撃するのではないか」という懸念が高まっているのだ。


欧米はイランに対し、核開発を凍結するよう求めているが、イランが要求を受け入れる可能性は低く、議論は国連安保理に持ち込まれることは確実だ。

だが安保理が経済制裁などを決議しても、イランは馬耳東風で、核武装への道を進むだろう。

西側世界を手玉に取るさまは、北朝鮮を思い出させる。


米国の特ダネ記者セイモア・ハーシュが報じたように、ブッシュ政権の様々な選択肢の中に、イランに対する空爆が入っており、国防総省が検討作業を行っていることは間違いない。

ブッシュ大統領は、イラク侵攻の一年以上前から、統合幕僚本部に詳細な戦争計画の準備をさせていたが、記者団に対しては「まだ何も計画はしていない」と煙に巻くような発言をしていた。

したがって今回も、戦争計画は水面下で着々と進められていると考えるべきだろう。

すでに
SOF(特殊作戦部隊)やCIAの準軍事部隊がイランに秘かに潜入して、攻撃目標の偵察を行っているかもしれない。

だが実際に攻撃に踏み切れるかどうかは、別の問題である。

米軍はイラクとアフガニスタンで地上戦を行っているため、イラン政府を転覆するために、新たに地上軍を派遣するのは難しい。

最も可能性が高いのは、核関連施設に対する空爆だが、重要な施設の多くは地下に建設されていると思われるため、どの程度破壊できるかは未知数である。

しかも、米軍が空爆を行った場合、イランはイスラエルにミサイルを撃ち込んだり、イラクで多数派を占めるシーア教徒を扇動して、米軍を攻撃させたりするかもしれない。

米国はただでさえイラクで苦戦しているが、イラン攻撃はイラクの混沌を一段と悪化させる危険を含んでいる。

またイランは、米国の攻撃を受けた場合、原油の動脈であるホルムズ海峡の封鎖に踏み切るかもしれない。

原油価格が高騰している背景には、こうしたイラン情勢の緊迫がある。

イランに対する軍事攻撃は、世界経済にイラク侵攻を上回る打撃を及ぼすかもしれない。

それにしても、9・11事件で動揺したブッシュ政権は、大量破壊兵器も持っていないイラクには侵攻したのに、核開発を堂々と進めているイランには、武力行使ができないというジレンマに苦しんでいる。

イラクではシーア派、スンニ派、クルド人の間で内戦の危機が日一日と高まっている。

アル・カイダのビン・ラディンはいまだに逮捕されていない。

ブッシュ氏が始めた「テロとの戦い」は、米国史上まれに見る迷走として、世界史に記録されるだろう。

米国はどのようにして、中東の泥沼への介入に終止符を打つのだろうか。

週刊 ドイツニュースダイジェスト 2006年4月28日