国際テロでイスラエル化する欧州
私は仕事でイスラエルへ時々行くのだが、市民たちは自爆テロと共存することを強いられている。
レストランやビル、商店街の入り口には武装ガードマンが立ち、全ての訪問者のカバンを点検する。
新聞には、リュックサックやスポーツバッグの写真入りの広告が載せられ、「不審な荷物を見たら、すぐ警察に連絡して下さい」と呼びかけている。
バスに対するテロで、知り合いを粉砕された人も、知っている。
だが市民はテロを恐れて自宅にこもるようなことはせず、週末には食事や映画にどんどん外出する。
テルアビブの海岸沿いのレストランは、テロが起きれば大変な被害がありそうだが、常に満員である。
同市の有名な海鮮レストランは、自爆テロで破壊され多数の死傷者を出したが、わずか1週間後に再開し、市民は店主を応援するために、こぞってこの店に食事に行った。
また、人々は最も危険が高いバスに乗っているし、市場でも買い物をしている。
彼らはテロのために、生活を変えたら、テロリストの思うつぼだと考えているのだ。
あるイスラエル人は言う。「普通に生活することが、テロへの最良の対抗手段です」。
ロンドンでの2度にわたる同時テロ、そして90人近い死者を出したシャルム・エル・シェイクでの同時多発テロは、イスラム過激派の力が衰えておらず、矛先が米国だけでなく欧州や中東諸国にも向きつつあることを示している。
欧米諸国が、アフガニスタンとイラクに侵攻して以来、これらの国々が国際テロリストをひきつける「磁石」となり、自爆テロ志願者を募るための、絶好の理由を与えていることは言うまでもない。
米国は2003年にイラクを占領して以来、すでに2000億ドル(約22兆円)の駐留費用を注ぎ込んでいるが、テロは鎮まるどころか、激しさを増している。
米国が撤退したら、同国は内戦状態に陥る危険もある。
大義名分としていた大量破壊兵器は見つからず、侵攻によって国際テロリストが逆に勢いを得てしまったというのは、皮肉だ。
こう考えると、今後欧州でテロ攻撃が増えることは確実であり、トゥール・ダルジャンやハロッズの入り口で、持ち物を警備員に見せなくてはならない時代がやってくるかもしれない。
米国に比べると、欧州ではイスラム教徒の比率が高いため、事前のテロ防止は一段と難しいからである。
欧州のイスラエル化は、21世紀が「テロの時代」であることを、象徴する出来事である。
週刊 ドイツニュースダイジェスト 2005年8月6日