北朝鮮よ、どこへ行く
2月10日に北朝鮮・朝鮮民主主義共和国は、3月に予定されていた、核開発問題をめぐる六カ国協議への参加をキャンセルすることを発表したが、その際に初めて、核兵器を保有していることを明言した。
このニュースに関して、ヨーロッパと日本のマスコミの間で、反応の仕方が大きく違っているのが、興味深かった。
北朝鮮は、これまでも六カ国協議など重要な日程の直前になると、参加を突然取り止めたり、核兵器に関する発言をしたりして、国際世論の注目を引きつけてきた。
その後態度を軟化させることによって、日米欧から最大限の経済援助を引き出すためである。
日本のマスコミは、今回のような協議ボイコットと核保有発言が、外交的圧力を増すための、北朝鮮の常套手段であることを知っている。
したがって、核兵器保有の発言もあまり大きくは取り上げなかった。
これに対しドイツの新聞は、核保有発言を大事件として、扱っていた。
日欧間の北朝鮮に関する知識や情報の量が違うために、記事の内容にも差が出てくるのだろう。
六カ国協議直前というタイミングを考えれば、今回の核保有発言も、経済援助目当てのものと考えるのが、論理的だ。
米国の情報機関は、北朝鮮が数個の核爆弾を持っていると予測していた。
また最近では、北朝鮮がリビアに対して、核兵器の製造に使える放射性物質を売っていたという疑いを強めている。
しかし、北朝鮮がほんとうに核兵器を持っているという確証はない。
このため、ヨーロッパのマスコミが騒いでいるほどには、事態がいっきに深刻化したわけではない。
北朝鮮が痛みを感じるのは、拉致問題にからんで日本が経済制裁に踏み切る時である。
拉致被害者の「遺骨」をめぐる北朝鮮側の態度は、日本人の感情をさかなでするものであり、経済制裁が実施される可能性は、日に日に高まっている。
この措置は、北朝鮮の経済を圧迫するので、これまで以上に同国が態度を硬化させる恐れもある。
日米欧にとっては、北朝鮮に若干の影響力を持つ中国に働きかけ、同国が孤立や暴走を見合わせるように、説得してもらうしかないだろう。
中国政府にとっては、国際社会に貸しを作る上でも、良いチャンスかも知れない。
イランだけでなく、北朝鮮の核問題をめぐっても、今年は重要な年になりそうだ。
週刊 ドイツニュースダイジェスト 2005年2月19日