オンライン捜索は許されるか?
連邦政府のヴォルフガング・ショイブレ内務大臣は、このようなオンライン捜索(Online Durchsuchung)を行う権利を、捜査機関に認めるよう要求している。
その理由は、アルカイダの影響を受けたイスラム過激派のテロリストたちが、ウエブサイトやメールを使って、互いに連絡を取り合っていることだ。大臣の発言は、ドイツ社会で大きな議論を巻き起こした。
多数のメンバーと同時に交信することを可能にするインターネットは、多くの国に分散して活動しているテロリストにとって、重要な道具である。過激な聖戦(ジハード)思想を広めるという目的にも、悪用されやすい。
過激勢力の中には、「ドイツがアフガニスタンから撤退しない場合には、無差別テロを起こす」というドイツ語の警告文を、ホームページに掲載した者もいる。
このためショイブレ大臣は、「アルカイダなどによる無差別テロを未然に防ぐためには、容疑者のコンピューターに入り込んで、文書やメールを押収し、分析することが不可欠だ」と主張しているのだ。
対外諜報活動を行う連邦情報局(BND)は、すでにオンライン諜報活動を行っていると言われる。たとえばフランクフルター・アルゲマイネ紙で働いていたウド・ウルフコッテ記者は、BNDに関する本を出版した。
彼はそのために、BNDにインタビューを申し込んだが、BNDの担当者がすでに自分の原稿の草案を持っていることに気づいた。
このためウルフコッテ氏は、BNDが通信回線を通じて自分のコンピューターに入り込み、草稿を盗み出したという疑いを強めている。
市民団体や左派政党からは、「ショイブレ大臣の提案は、東ドイツの秘密警察シュタージを思い起こさせる」として、強い批判の声が上がっている。確かに、警察がオンライン捜索の権利を乱用した場合、多くの市民のプライバシーが侵害される恐れもある。
しかし、イラクやアフガニスタンでの欧米の軍事作戦が長引く中、イスラム過激派がロンドンやマドリードで起こしたような無差別テロを、他の都市でも実行に移す危険は、刻々と強まっている。
捜査当局にとって、潜伏しているテロリストを摘発するための、対抗手段が必要であることも事実だ。
警察の捜査を可能にするために、市民のプライバシーの侵害はどの程度許されるべきか。この議論には、なかなか決着がつきそうにない。
2007年11月3日 週刊ニュースダイジェスト