欧州議会選挙の教訓

 6月上旬にEU(欧州連合)加盟国で行われた欧州議会選挙は、45・5%と極めて低い投票率を記録した。

この選挙結果は、ヨーロッパの市民にとって欧州議会が、依然として遠い存在であることを浮き彫りにした。現在、環境問題から製品の安全度、不正競争の防止まで、多くの国内法が、欧州議会を通過した
EUの指令に基づいて決められており、欧州議会の重要性は高まる一方である。

また、欧州議会がなかったら、欧州委員会の提案に市民の代表が異議を唱えたり、変更を求めたりするチャンスがなくなる。欧州議会が持つこうした役割を考えると、今回の投票率の低さは驚きであり、
EUと各国政府の広報活動が、不十分であることを示している。

特に5月に
EUに加盟したばかりの中欧・東欧諸国では、市民の関心が特に低く、得票率を前回に比べて4ポイントも引き下げる主因となった。ポーランドの投票率は20・9%、チェコでは28%、スロバキアでは17%という惨憺たる結果である。

5月にチェコに行った時に、市民たちが「リストラの中で生き残り、仕事を失わないようにするのに必死で、
EU加盟にはあまり関心がない」と、白けた感じで語っていたのを思い出した。

西側のテレビで放映されたのは、中欧・東欧政府の閣僚や支持者たち、もしくは政治や歴史に関心のある一部の市民が、
EUへの正式加盟を祝っていた様子であり、日々の生活に追われる大多数の市民にとっては、欧州議会などは縁遠い存在なのである。その意味で、中欧・東欧政府はEUの仕組みや議会の重要性について、広報活動を強める必要がある。

 一方、西欧では市民が政権党に対して、抗議の姿勢を示したのが目立った。英国やイタリアで政権党が得票率を減らした背景には、政府が米国に追随して、イラクに派兵したことについての、国民の不満感がある。

フランスでは、極右政党
FNが躍進して10%近い得票率を記録したが、市民が政府の外国人政策に対して抱く不満が表れている。

ドイツで社会民主党(
SPD)が9ポイントも得票率を減らしたのは、去年からの長期低落傾向が続いたことを示すもので、意外なことではない。市民は失業率が改善しないことや、生活水準を低下させる社会保障削減に、今回もノーと言ったのである。シュレーダー政権が二年後に消滅する可能性が、一段と強まったと見るべきだろう。

週刊 ドイツニュースダイジェスト 2004年6月26日