アル・カイダの石油テロを阻止せよ!
今年に入ってサウジアラビアで3件もの大規模テロが発生したことは、イスラム系国際テロ組織が、石油という世界経済の血液を標的にし始めた可能性を示している。
特に5月31日に石油関連企業が集中している、サウジアラビア東部のアルホバルで、テロリスト4人が米国人や英国人、フィリピン人、インド人ら多数を人質にして住宅にたてこもり、22人を殺害した事件は、同国に進出している日・欧・米企業に強い衝撃を与えた。
特殊部隊の突入が大幅に遅れただけでなく、犯人の内大部分が逮捕を免れて逃走したことは、世界最大の産油国がテロ対策の面で大幅に遅れていることを、はっきりと示している。サウジアラビア政府は、今後外国人の安全確保に全力を挙げるとしているが、アル・カイダは今回の作戦に勢いを得て、同国を引き続き標的とする恐れがある。
今回の惨劇の特徴は、アラブ系テロリストが単に米国人だけでなく、サウジアラビアにいるアジア人を含めた外国人、非イスラム教徒全てを敵と見ていたことであり、我々日本人にも他人事とは言えない。
この事件の直後に、米国の原油価格は1バレル42ドルという高値を記録した。今後も石油施設や石油関連企業を狙ったテロが、中東で多発するのではないかという懸念が、市場関係者の間で広がったからである。アル・カイダが、テロと原油価格の関係に目をつけ、油田やタンカー、石油会社を狙った大規模テロを実施した場合、世界経済に甚大な悪影響が及ぶ恐れがある。
欧米そして中東諸国は、アル・カイダの「石油戦略」発動を阻止するために、全力を注ぐべきだ。一方9・11事件から3年近く経っても、ビン・ラディンが逮捕されていないばかりでなく、彼が播いた憎悪の種は、トルコ、スペインなど様々な国々で、テロ活動を活発化させている。
テロ対策専門家の間には、米国のイラク侵攻によって、アル・カイダはかえって支持者を増やしたという見方がある。このテロ組織は、米軍の攻撃によってアフガニスタンの拠点を奪われたダメージから回復し、体制を逆に強化しつつあるというのだ。ブッシュ大統領の「イラク攻撃によって、世界は安全になった」という言葉は、空しく聞こえないだろうか。
CIAのテネット長官が6月初めに突然辞任したことも、イラクで大量破壊兵器が見つからず、対テロ戦争が思うように進んでいないことが、米国政府部内でも問題化していることを示唆しているのかもしれない。
週刊 ドイツニュースダイジェスト 2004年6月12日