サブプライム危機とドイツ経済
2007年の師走は、有給休暇を取らなくても、週末とクリスマス休日がずらりと並んだために、5日連続して休むことができるという、勤労者には素晴らしい年の瀬だった。
ふだんの忙しさから解放されて、ほっと一息つかれた方も多いのではないだろうか。
しかしながら、油断は禁物。
2008年のドイツ経済の前途には、暗雲がたちこめているように見える。
その最大の理由は、米国で不動産バブルがはじけたために、サブプライム危機が、各国の経済にじわじわと影響を与え始めていることだ。
2000年代の初めから、支払い能力の低い市民に貸し出された不動産ローンは、不動産価格の下落によって、どんどん焦げ付き、不良債権化しつつある。
このローン劣化現象は、今年ピークを迎えるものと推測されている。
こうした不動産ローンは、最新の金融工学テクノロジーによって証券化されて、グローバル資本市場で、投資家に提供された。
世界中の銀行や保険会社は、高い利回りを求めて、こうしたサブプライム証券に投資していった。
世界中の金融機関のポートフォリオに、悪性のウイルスのように危険度の高い証券が忍び込んでいったのだ。
ドイツのIKB産業銀行やザクセン州立銀行が、経営破綻の瀬戸際まで追い込まれた裏には、投資担当者が十分にリスクについての審査を行わずに、サブプライム証券に投資していたという事実がある。
これからも、ドイツの金融機関の損失はふくらみ、銀行による貸し渋りの傾向が強まる恐れがある。
ドイツでは昨年から景気の回復傾向が顕著になり、失業者の数が大幅に減り始めている。
だが、残念なことに、米国に端を発したサブプライム危機のために、ドイツ経済の成長率に再び鈍化の兆しが見え始めている。
欧米の中央銀行が、年末に金融市場に大量の資金を注入したのも、銀行の貸し渋りによって各国の景気が悪化するのを防ぐためである。
去年IKB産業銀行の巨額損失が明るみに出た時、ドイツ金融サービス監督庁のヨッヘン・ザニオ長官は、「今回の危機は1930年代以来最も深刻なものだ」と発言したが、各国政府の関係者の間では、米国発の景気停滞について、同じような危惧が強まっているように思われる。
今後米国では、国民の消費意欲が減退するので、景気の悪化を恐れて。資金逃避が進行する。
このためドルはユーロや円に対してますます弱くなり、ドイツから米国への輸出は益々難しくなるに違いない。
これまたドイツ企業にとっては、悪い知らせだ。サブプライム危機によるドイツおよびヨーロッパ経済への悪影響が、最小限にとどまることを切望する。
週刊ニュースダイジェスト 2008年1月16日号