混乱するドイツ政局・責任は誰に?
与野党ともに、通常の連立方式では過半数を確保できないという異常事態を生んだ連邦議会選挙から、2週間近く経った時点でも、どのような連立政権が誕生するのか、めどが立っていない。
CDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)とSPD(社会民主党)の議席差は3議席にすぎないため、シュレーダー首相は、「選挙に勝ったのは私だ」とゆずらない。
CDU・CSUとSPDが大連立政権を作ろうにも、シュレーダー氏はCDUのメルケル党首が首相になることに反対しているため、交渉は膠着状態である。
そこでCDU・CSUとFDP(自由民主党)には、緑の党を取り込んでいわゆる「ジャマイカ連立政権(同国の国旗が、黒・黄・緑を使っているため)」を作ろうという意見もあるが、緑の党ではトルコのEU加盟問題や、脱原子力をめぐって、政策の違いが大きすぎるとして、保守勢力との連立に反発する声も出ている。
またSPDにはFDPと緑の党と組んで、「信号連立政権」を作りたいという向きもあるが、FDPは頑として拒否している。
つまり、与野党が四すくみ状態となっており、誰かが譲歩しない限り、連立政権の樹立は難しい。
政権の空白が何週間も続くのは好ましいことではないので、各党の指導者たちは小異を捨てて大同に就き、混乱に終止符を打って欲しいものだ。
5月のノルトライン・ヴェストファーレン州の議会選挙でSPDが歴史的な敗北を喫した際に、政権党の混乱に歯止めをかけるために、ケーラー大統領は、シュレーダー首相の請うまま、完全に合憲かどうか疑問のある、連邦議会解散に踏み切った。
しかし、選挙によって混乱が一層大きくなったきらいがある。
ドイツには「雨を避けて豪雨の中に入る」(Aus dem Regen in die Traufe kommen)ということわざがあるが、この国は正にそうした状況にある。
「ケーラー大統領は、シュレーダーの解散要請を拒否するべきだった」として、大統領を批判する声まで聞かれる。
CDUは内部分裂している印象を与えないために、メルケル党首の下に団結する姿勢を見せているが、投票日の1週間前までは40%の得票率が予想されていたのに、実際には前回の選挙の得票率を割り込み、35・2%しか確保できなかったのは、メルケル党首が市民の信頼を得られなかった証拠である。
だれが首相になるにせよ、与野党が進めようとしている構造改革にドイツ市民たちが、「ノー」と言ったことで、新政権の基盤が脆弱なものになることだけは、間違いなさそうだ。
かつては経済大国であったドイツの政治の混乱は、欧州全体にとっても不幸なことである。
週刊 ドイツニュースダイジェスト 2005年9月30日