大連立政権・茨の道
2週間にわたる交渉の末、CDU(キリスト教民主同盟)と姉妹政党のCSU(キリスト教社会同盟)は、10月10日に、SPD(社会民主党)と大連立政権を樹立することで合意し、この国で初めて旧東ドイツ出身の女性首相が誕生することになった。
SPDは、外務大臣、財務大臣など、8つの閣僚ポストを手にした。
シュレーダーが選挙で負けたにもかかわらず、続投にこだわっていたのは、CDU・CSUから最大の譲歩を引き出し、できるだけ多くの閣僚ポストを確保するための作戦だったのかもしれない。
大連立政権の成立は、1966年のクルト・ゲオルグ・キージンガー政権以来、39年ぶり。
だが、与野党ともに過半数を取れないという異常事態は、新政権に色濃く影を落としている。
投票日から政権の枠組みが決まるまでに、2週間以上もかかったことからわかるように、大連立政権では、閣内で意見の対立が生じやすく、意思決定に時間がかかる恐れがある。
ミュンヘン大学・応用政治センターのマヌエラ・グラープ研究員も、「CDU・CSU・FDPの通常の保守連立政権に比べると、大連立政権では、政府の運営能力が劣るため、理想的な形態ではない」と語る。
一方、選挙の争点だった、社会保障削減などの構造改革について、多くの有権者がノーと言ったことが、与野党とも過半数割れを起こした原因なので、連邦議会で改革に必要な法案を通過させるには、大連立政権が適しているかもしれない。
実際、1966年の大連立政権は、様々な改革を実現することに成功した。
企業の社会保険料負担や税負担を減らして、国際競争力を高めなくては、企業は雇用を拡大できず、失業問題はいつまでも解決しない。
果たして大連立政権は、国民に「痛みを伴う改革」を受け入れる必要性について、説得することができるだろうか。
公的健康保険の抜本的見直し、公的年金の支給開始年齢の引き上げなど、デリケートな課題に、新しい政権は直ちに取り組まなければならない。
同時に新政権は、多くの国民が将来について抱いている不安を、和らげる努力を迫られるだろう。
彼らの強い不安が、二大政党から過半数を奪ったことを、忘れてはならない。
いずれにしても新しい政権にとって、政局運営はきわめて困難なものになるだろう。
週刊 ドイツニュースダイジェスト 2005年10月15日