インド洋大津波・被災者を救え!

常夏の楽園を思わせる砂浜に、手足を広げて累々と横たわる水死体。30度を超える暑熱のために腐敗が激しく、アジア人かヨーロッパ人かも、区別がつかない。押し寄せる大波に、リゾート地は廃墟と化した。クリスマス気分も、新春のめでたさも吹き飛ばす、痛ましい光景だ。

スマトラ沖の巨大地震が引き起こした大津波で、15万人を超える死者・行方不明者が出たことは、大自然の猛威の前にわれわれ人間がいかに弱くもろい存在であるかを、強く感じさせた。宮城県沖地震や東海沖地震が予想される日本にとっても、他人事ではない。

今回の災害の特徴は、インドネシア、タイ、スリランカなど複数の国々が同時に大被害を受けただけでなく、ドイツやスカンジナビアなどヨーロッパからの避寒客たちの間に、多数の犠牲者が出たことである。その意味で、21世紀には自然災害も「グローバル化」することが浮き彫りにされた。

国連に対し今回の大津波は、創立以来最も大規模かつ困難な救援・復興プログラムを実施するよう迫っている。津波に襲われた国々にとっても、未曾有の試練であり、地域が復興するまでには今後何年もかかるだろう。特に疫病の発生防止や、インフラ再建のために、全世界が一丸となって支援活動を行う必要がある。ドイツ政府は12月6日に、援助額を一気に5億ユーロ(700億円)に引き上げ、日本を抜いて世界最高の額を提示した。「財政赤字がふくらむ」と懸念する声もあるが、人命救助のためには、やむを得ない。

1000人近い死者・行方不明者が出ていることもあり、ドイツ市民の関心は非常に高く、市民や企業の間で盛んに募金活動が行われている。津波の発生直後は、アジアから遠く離れているドイツの方が、日本よりも対応が早かった。シュレーダー首相、フィッシャー外相ともに休暇を取り止めて、情報収集と救援活動の陣頭指揮にあたった。この早い初動が、援助活動の広がりに大きく貢献した。

プーケットの海岸では、10歳の英国人の女の子が、海水が急に引くのを見て、学校で習った津波の前兆と直感し、付近にいた人々100人以上の命を救った。15万人という多数の犠牲者を出すまで、津波の警報システムの必要性が注目されなかったことは残念である。被害にあった国々の台所事情の苦しさも、自然災害への備えが整っていなかった理由の一つであろう。

ドイツ政府が提案しているように、先進国はインド洋沿岸諸国に対し、警報システムの構築についても手を差し伸べるべきではないだろうか。

2005年1月14日 週刊 ドイツニュースダイジェスト