国外派兵に強まる批判
ドイツは、日本政府とは対照的に、米国のイラク侵攻には強く反対し、現地に一兵も送らなかった。

しかし、アフガニスタンには約3000人の兵士と、電子偵察機能を持った戦闘機を送っている。

その理由は、アフガニスタンで、イスラム過激派・タリバンが力を盛り返しつつあり、現在の政権が転覆された場合、再びこの国がテロリストの巣となる恐れがあるからだ。

米国で9・11事件を起こしたテロリストたちは、アフガニスタンを拠点としたアルカイダに操られていた。

アフガニスタンのドイツ軍兵士たちは、直接タリバンとの戦闘には加わっておらず、後方での治安維持や、人道支援を主な任務としている。

それでも、ここ数年ドイツ軍の兵士が自爆テロ攻撃にさらされることが増えており、すでに26人が死亡している。

このためドイツでは、軍を国外へ派遣することについて、市民の支持が急速に減りつつある。

アレンスバッハ世論調査研究所のアンケートによると、5年前にはアフガニスタンへの派兵を支持する人の比率は、全体の51%だったが、現在では29%に急落している。

また、将来連邦軍を国外へ派遣することに反対する人の比率も、2年前には34%だったが、今では50%に達している。

国外派兵への支持が急落している理由は、アフガニスタンで犠牲者が増えていることや、タリバンの抵抗が強まっているために、いつ軍を引き揚げられるかについて、全くめどが立っていないことだけではない。

アルカイダの影響を受けたテロリストたちは、ホームページに「ドイツがアフガニスタンから撤退しない場合には、無差別テロを行う」というドイツ語の警告文を発表している。

ドイツでは、今年9月に爆弾テロを行うために、大量の化学薬品を買い集めていたドイツ人とトルコ人が逮捕されている。

彼らは、人里はなれた借家で起爆装置を使って爆弾を作り始めており、米軍の将兵が住む住宅などの下見を行っていた。

2人の若いドイツ人は、キリスト教からイスラム教徒に改宗しており、アルカイダの過激な思想にかぶれたものと見られている。

前述のアンケートによると、回答者の56%が「アフガニスタンへの派兵によって、国内でのテロ攻撃の危険が高まった」と考えている。

市民の間ではロンドンやマドリードで発生したようなテロへの不安感が広がっているのだ。

今後ドイツでテロが起きたり、アフガニスタンでの犠牲者の数が増えたりすれば、メルケル政権が苦しい立場に追い込まれる可能性もある。

保険毎日新聞 2007年12月