白熊のクヌート
日本の皆さん、こんにちは。ぼくは去年12月にベルリン動物園で生まれた、白熊のクヌートです。
飼育係のおじさんのおかげで、体重が8キロになりました。ぼくは、今年3月に、マスコミの人たちに初めて顔見世しました。
記者が500人、テレビ局のカメラクルーが100チームも、動物園に押しかけたんですよ。こんなに沢山のカメラマンに撮影されたのは初めてなので、疲れてしまいました。
まるで先進国首脳会議か、カンヌ映画祭の取材なみの騒ぎでした。
マスコミの人は、ぼくのこと以外に、もっと報道することがないのかな?
最近はドイツだけでなく、アメリカの「バニティー・フェア」とか、「ピープル」といった雑誌の表紙にも、ぼくの写真が使われています。外国の人も動物が好きなんですね。
特に、「バニティー・フェア」は、合成写真で俳優のデカプリオさんと一緒に並ばせてくれました。
ベルリンの地元放送局のホームページを見ると、ぼくの一挙一動が報告されています。
「クヌートが復活祭にうさぎのぬいぐるみで遊びました」、「クヌートが違う檻に引っ越しました」、「クヌートの歯痛が治りました」とか、いろいろな話題が載っています。
「クヌートが自分で書いたブログ日記」というものありました。僕はドイツ語を書けないのになあ?
ベルリン動物園にはぼくが生まれてから、沢山のお客さんが来るようになりました。3月末までに10万人の人が、動物園を訪れてくれました。
でも、最近になって「クヌートを殺す」という脅迫状が動物園の事務所にファクスで届いたので、心配したお巡りさんが警戒に来てくれました。ぼくにあまり人気が集まっているので、ねたむ人間がいるのでしょうか。
ぼくよりも頭が良いはずなのに、変な人がいるものですねえ。飼育係のおじさんは、「脅迫状が来るようになったら、本当の有名人だ」と言っていたけれど。
ぼくの世話をしてくれているベルリン動物園は、19世紀に創設されて以来、株式会社として経営されています。
今年3月になって、新聞やテレビがぼくについて沢山報道したら、動物園の株価が、67%も上がったんですよ。
園長さんも、とても喜んでくれました。それに、ぼくの形をしたぬいぐるみの人形も、飛ぶように売れているそうです。
「クヌート効果」と言うらしいですが、ドイツの経済のために少しでもお役に立てれば、嬉しいです。
皆さんもベルリンに来る機会があったら、ぼくの檻をぜひ覗いて見て下さいね。お待ちしています!
(文と絵・ミュンヘン在住 熊谷 徹)筆者ホームページ http://www.tkumagai.de
保険毎日新聞 2007年5月