クリスマス・ストレス
2007年は、ドイツ経済にとって比較的良い年だった。

企業の輸出が好調だったために収益が改善し、人材を新たに採用する会社が増えた。

このため、失業者の数が目に見えて減り、17年前にドイツ統一以来、最も低い水準になった。

そのせいか、歳末のクリスマス商戦は、ここ数年に比べて好調だった。

12月下旬、ミュンヘン市の中心にあるマリエン広場界隈は、プレゼントを買い求める市民で、にぎわった。

ある電器店では、どのレジにも20人近い人々が列を作っていた。

某デパートの地下食料品売り場でも、押し寄せてくる人の波のために、まっすぐ進むことができない。

マリエン広場から郊外へ向かう列車は、買い物袋を持った人々で超満員。

ある中年の女性が、知り合いと話している。

「家族にプレゼントを買おうと思ったけれど、あまりの混雑で、すっかりくたびれてしまったわ」。

知り合いがあいづちを打つ。

「そうね、クリスマスも疲れるばかりで、昔ほど楽しくなくなったわね」。

会社や工場で1日働いた後に、クリスマス・プレゼントを買うために繁華街へ行き、人ごみでもみくちゃにされるのは、確かに疲れるものだ。

贈り物をもらう子どもたちには楽しい季節だが、フルタイムで働いている親の中には、ストレスを感じる人もいるだろう。

クリスマスの忙しさは、プレゼントのためだけではない。

ドイツ人の中には、家族のために自分でクッキーを焼く人もいる。

また、クリスマス・ツリーも、街角の露店へ行って毎年買って来なくてはならない。

遠くに住んでいる家族を訪れるために、飛行機や列車で遠出をしなくてはならない人も多い。

2007年のドイツのクリスマスは、土曜日、日曜日に祝日(24日から26日まで)が並び、5連休だった。

27日と28日も休めば、11連休である。

このため、ふだんの年よりも、ゆっくりクリスマス・ストレスから回復できたという人も多いかもしれない。

だが年が押しつまった頃、大手自動車メーカーのBMWが、2012年までに60億ユーロの費用を節約するために、ドイツの従業員数を、8000人減らすというニュースが流れた。

会社側は、「長期的な計画に基づくもの」と説明しているが、ドルに対するユーロ高や、サブプライム問題による米国の景気の陰りも、影響しているのかもしれない。

数日間のクリスマスのお祝いが過ぎると、せちがらい現実が戻ってくる。

(文と絵・ミュンヘン在住 熊谷 徹) 

2007年12月 保険毎日新聞