ドイツ・究極のケチケチ生活
ドイツでは、7月の時点で失業者の数が戦後最高の440万人に達した。
いつもより早く始まった夏物一掃セールにもかかわらず、消費は伸びていない。
街にはなんとなくどんよりとした雰囲気が流れている。
先日、「デイスカウント・スーパーで節約だ!」と近くのスーパーに行ったら、倒産していた。
住宅地にあって目立たなかったせいだろうか。
別のデイスカウント・スーパーは、まだ学校が夏休み中であるためか、普段よりもすいていた。
しかし、そこで私は見てはならないものを見てしまった。
高齢の女性がさくらんぼ売り場の前で、さくらんぼをビニール袋に入れるふりをして、なんと、むしゃむしゃ食べていたのだ。
ご丁寧にも種をときどき出して、かがみながら、床に「ポイ捨て」していた。このふてぶてしさには脱帽である。
よくレジ直前で待ちきれないのか、清涼飲料水をあけて飲んでいる人がいるが、この女性は、胃におさめたさくらんぼの料金は払わないだろう。
つまり、これはれっきとした万引である。
しかし、私はそれまで、胃の中に商品を入れてしまう万引き犯に出くわしたことがなかった。
いくら落ちぶれてもここまでしてはならない、という教訓だ。
ドイツも長引く不況で、人々がどんどん財布の紐を固くしているのは理解できるのだが。
デイスカウント・スーパー業界でも最近は、トップの座を保持するのが大変なようで、激しい競争となっているのは消費者としては歓迎すべきことだ。
しかし、冷静になって商品を比べてみると、微妙な違いがあり、「安いにちがいない」という思い込みは禁物であることが、最近わかってきた。
先日も旧東独の小さな町のスーパーで、コーヒーが安いという先入観で買ったのであるが、ミュンヘンのスーパーに行ったら、20セント(約27円)安いではないか。
うーん、なかなか思った通りにはいかない。
ミュンヘンのある日本食料品店では、「当店にある商品より、他の店で安く売っている場合はお知らせください。そこの店より安くお売りします」という広告を出していた。
後日行ってみると、その店では、ライバル店より豆腐を1セント(約1円)安く売っていた。
景気が低迷するドイツでは、今後も安売り合戦がますます過熱しそうだ。
(文・福田直子 絵・熊谷 徹)
保険毎日新聞 2004年10月12日