地球温暖化への対応を急ぐドイツ

Auszug von der Rede von Bundesumweltminister Sigmar Gabriel bei der Berliner Klimakonferenz am 18. Mai 2009

"Verantwortungsvolle Klimapolitik muss alles tun, um den globalen Klimawandel zu begrenzen und das Klima durch verringerten Treibhausgas-Ausstos zu schuetzen. Sie muss die Gesellschaft aber auch auf unvermeidliche Folgen vorbereiten wie hoehere Temperaturen, den steigenden Meeresspiegel und eine andere Verteilung der Niederschlaege“

 

ジグマー・ガブリエル連邦環境大臣がベルリン気候会議で2009年5月18日に行った演説からの抜粋

「我々は責任感に満ちた気候(保護)政策の一環として、地球的規模の気候変化に歯止めをかけ、温室効果ガスの排出量削減を通じて気候を守るために、あらゆる手立てを取らなくてはなりません。同時に気温の上昇、海面の上昇、降雨量の変化など気候変化がもたらす影響について、社会を適応させて準備を整えなくてはなりません」

出典・Bundesumweltministeriumドイツ連邦環境省のホームページ

 

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスがもたらす地球温暖化、そして気候の変動は、世界中で大きな問題になっています。ドイツは、世界で最も温暖化対策に積極的な国の一つです。メルケル政権は、2020年の温室効果ガスの排出量を、1990年に比べて40%減らすことをめざしています。

この目標を達成するためにドイツ政府は、8つの具体的な対策を打ち出しました。たとえばエネルギー消費の効率性を高めることによって電力消費量(Stromverbrauch)を現在に比べて11%減らすことや、風力、太陽光などによる再生可能エネルギー(erneuerbare Energie)が発電量に占める割合を現在の14%から27%に増やすことを計画しています。

また建物の密閉性を高めたり、暖房施設の効率を高めたりすることによる省エネ、発電所の燃焼効率を良くすることなど、様々な対策が行われます。ガブリエル環境大臣は、“Kein Zweifel: Dieses Massnahmenpaket ist sehr ehrgeizig, aber machbar.“(この対策がとても野心的なものであることは間違いありません。しかし実行することは可能です)と述べています。

同時にドイツ政府は、「すでに地球温暖化が始まっているために、今世紀の終わりまでに社会や経済に様々な変化が生じることは避けられない」と主張しています。環境省によりますと、ドイツの平均気温は1901年から現在までに0・9度上昇しました。同省では、「最悪のシナリオが現実になった場合、ドイツの平均気温は2021年から2050年までに1・5度、2071年から2100年までに3・5度上昇する可能性がある」と予測しています。

このことはドイツ社会にどのような影響を与えるのでしょうか。メルケル政権は「2000年以降しばしば観測されたような暖冬傾向がさらに強まり、南部の山岳地帯では降雪量が大幅に減る可能性がある。冬には雪ではなく雨が多く降るようになり、降雨量は全国で40%増加するので、ライン川の流域では洪水の危険が高まる」とみています。2000年以降、ドイツ・アルプスのスキー場は冬になっても積雪がふだんよりも大幅に少ない年を数回経験しました。この時にはスキー客によるキャンセルが相次ぎ、観光産業は打撃を受けています。

また政府は「逆に夏の降雨量が全国平均で最高40%減少するので、ドイツ東部と南西部は深刻な水不足に襲われる危険がある」と予測しています。ブランデンブルク州では今でも年間降雨量が極端に少なくなっています。

2003年には、Sahara-Sommer(サハラ砂漠のように暑い夏)というあだ名をつけられるほどの猛暑がドイツを襲いました。この年、フライブルクでは気温が30度を超える日が54日間に達しました。世界保健機関(WHO)は、この年の熱波で約7万人のヨーロッパ市民が犠牲になったと推定しています。この国の住宅や会社にはふつう冷房がありません。このため扇風機やクーラーが飛ぶように売れました。

気温の上昇は、農業や林業に大きな影響を与えます。一部の樹木は暑さに弱い上に、害虫や病原体による植物の被害も増えることが懸念されているのです。

ドイツの科学者たちは「涼しい気候と湿気を好む樹木であるFichte(ドイツトウヒ)は、気温の上昇によって大きな被害を受けるだろう」と予想しています。Fichteはドイツの樹木の28%と最も大きな割合を占めているので、気候変動のためにこの国のシンボルである深い森林も様変わりしてしまうかもしれません。

また環境省では「20世紀の100年間に、氷河や南極・北極の氷が溶けたために世界中の海面は平均17センチ上昇した。この傾向は今後さらに続くために、ドイツ北部では暴風によって高潮の危険が高まるだろう」と警告しています。

このためメルケル政権は、気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、社会や経済を変えていくことが必要だとして、Anpassungsstrategie an den Klimawandel(気候変動に適応するための戦略)を昨年の暮れに閣議了承しました。

政府は全ての省庁の代表が参加する作業部会を設置し、気候変動が農業、林業、水産業、観光産業、市民の健康、生態系などにもたらす悪影響を調査することにしています。この作業部会は2011年3月までに、こうした悪影響を減らすためには社会や経済の構造をどのように変えるべきかについて、具体的な行動計画(Aktionsplan)をまとめます。

たとえば冬のスキー客に依存しているドイツ・アルプスの観光地では、将来積雪が大幅に減ることに備えて、収入源を多角化するための努力が必要になります。ドイツ北部の沿岸部では、高潮に備えて堤防を増強しなくてはなりません。

ドイツ政府は市民の問題意識を高めるために、今年5月に「ドイツの気候変動・適応することが必要だ(Klimawandel in Deutschland - Anpassung ist notwendig)」という15ページのパンフレットを主要新聞にはさんで配布し始めました。政府が直接市民に向けて小冊子を配ることに、強い危機感が表われています。

私はドイツに19年住んで、環境保護や自然への愛情が国民のアイデンティティーの一部になっていることを学びました。政府が気候変動対策に熱心である背景にも、この高い環境意識が影響しているのではないでしょうか。 


NHKテレビ ドイツ語会話 2009年8月号