生保の解約返戻金訴訟で歴史的判決(独)
ドイツの消費者が、「生命保険会社が、契約開始から数年後に解約した顧客に全く解約返戻金を支払わないのは違法」として連邦憲法裁判所に訴えていた訴訟で、裁判所は、10月12日、原告の訴えを全面的に認める判決を言い渡し、生保業界に強い衝撃を与えている。
この裁判は、1994年から2001年に締結された生命保険契約をめぐり、アリアンツ生命とプロヴィンツィアール生命が、契約締結から数年後に解約した顧客に対し、解約返戻金を全く支払わなかったことを不服として、顧客が訴えていたもの。
裁判所側は、「解約返戻金がゼロになるような計算方法は、憲法で保障された利益を侵害するものであり、最低限の金額が返戻金として支払われるべきだ」という判断を示した。
ドイツの生保会社が採用している計算方式によると、契約締結にかかった費用(代理店手数料など)が最初の数年間に引き去られるために、顧客は数年間で解約すると、返戻金を全く受け取ることができなかった。
この判決によって、生命保険会社は、早期に解約した客にも解約返戻金を支払わなければならず、業界全体で1000万件から1500万件の契約について、少なくとも数億ユーロ(数100億円)単位の返戻金を追加的に支払わなくてはならない可能性が強まっている。
ドイツでは、不況の影響で毎年の解約率が20%に達しており、数年で解約した顧客からは、解約返戻金が支払われないことについて、不満の声が強まっていた。
ドイツ保険協会(GDV)は、今回の判決を、予想を上回る厳しい内容として受け止めており、「生保業界に大きな負担となりかねない」と見ている。
連邦憲法裁判所は、今年7月にも、「生保契約は顧客に含み益を十分に還元していない上、含み益がどう配当の中に反映されているかについて、情報を開示しておらず、憲法違反」とする判決を出したばかり。
ドイツの生保業界は、顧客の権利を大幅に拡大するこれらの判決によって、責任準備金の積み方などについて、根本的な方針転換を迫られそうだ。
2005年10月 保険毎日新聞