イラク戦争の早期終結を!

イラク南部に米軍が設けた検問所。制止を無視して走ってきたトヨタのバンを、米軍のブラッドレー型装甲戦闘車が発射した25ミリ機関砲弾が、ずたずたに引き裂いた。乗っていたのは、イラク兵士やテロリストではなく、あるイラク人の家族だった。この事故で、女性や子ども少なくとも7人が即死している。米軍はバグダッド郊外に達し、包囲戦の構えを取りつつあるが、その陰で戦闘の巻き添えや誤爆のために、死んだりけがをしたりする市民の数も増えている。兵士たちがこのバンを攻撃した理由は、イラク軍が民間人を装い、検問所でタクシーにしかけた爆弾を炸裂させる自爆テロで、アメリカ兵4人が死亡するという事件があったからである。このテロ以降米軍は、「身体検査などによって民間人と確認されない限りは、全ての民間人を戦闘員とみなせ」という指令を出している。イラク側は、兵器の性能や物量で米軍に大幅に劣っているため、ちょうどパレスチナ人がイスラエル軍に対して行っているような、ゲリラ戦を展開しているのだ。バグダッド周辺での戦いでは、この種のテロ攻撃が増えることが予想される。米英軍は、市民の犠牲を少なくする努力をしながら、バグダッドを占領しなくてはならないが、追い詰められたイラク側は、市民を盾に使い、兵器を住宅街に配置して、空爆を避けようとするだろう。

サダム・フセインにできることは、米英軍とイラク市民の犠牲者が増えることによって、欧米で厭戦気分を高めることくらいである。戦争が始まってしまった以上、我々が希望できることは、一日も早く戦闘行為が終結して、市民が巻き添えになる事態を避けることしかない。開戦まで戦争に反対していたドイツやフランスも、米軍が早期に戦争に勝つことを期待するニュアンスの声明を出している。さらにドイツ政府は、戦後のイラクの再建と統治が国連の主導で行われるならば、協力を惜しまないという態度を打ち出している。サダム・フセイン後のイラクがクルド人・シーア派・スンニ派の三つの地域に分裂して、内乱状態になれば、市民の苦しみは続く。そうした事態を避けるために、国連は、戦闘が続いている時から、「サダム・フセイン後のイラク」について一刻も早く具体的な青写真を描かなくてはならない。


週刊 ドイツニュースダイジェスト 2003年4月12日号掲載