ドイツ脱原子力合意  シュターデ原子力発電所・停止の波紋

ドイツ北部・ニーダーザクセン州のシュターデ原子力発電所。今年11月14日の夜、発電所の技術者たちは、31年間にわたって稼動してきた原子炉を停止させた。出力は徐々に低下し、翌朝の8時32分にこの発電所から流れる電力量は、ゼロになった。これは2000年にシュレーダー政権が決定した脱原子力計画に基づいて、稼動中の原子力発電所が初めて停止させられた瞬間である。

* 17年後の全廃を強調

この日、緑の党に属する連邦環境省のJ・トリティン大臣は、ベルリンの現代美術館で、シュターデ発電所の停止を祝うパーティーを開き、脱原発主義者や環境保護団体を招いて、シャンペンのグラスを傾けた。トリティン氏は、演説の中で反原子力の姿勢を改めて強調した。「シュターデの停止で、ドイツの原子力発電に未来がないことを、我々は明確に示した。2020年には、この国には一基の原子炉も動いていないだろう。我々は環境税によってエネルギー節約を推進するとともに、エネルギー効率の良い発電所を振興する。また、17年後には再生可能エネルギーが電力消費量に占める比率を、少なくとも20%まで高めるつもりだ」。シュターデ原子力発電所の解体工事は、2005年から10年間かかる予定だ。電力会社・EONはそのために5億ユーロ(約650億円)の費用を見込んでいる。「この廃炉費用の見積もりは十分なのだろうか」というドイツの記者の問いに対して、トリティン氏は、「電力会社はそのために十分な準備金を積み立てているはずだ。実際に廃炉にかかる費用が、万一準備金を上回ったとしても、電力会社は政府からの補助金を期待することはできない」と述べ、電力会社は政府の援助に頼ることはできないという姿勢を明らかにした。

* エネルギー政策をめぐる激論

さてドイツの電力関係者の間では、トリティン大臣が公費を投じて、シュターデの停止を記念するパーティーを開いたり、宣伝キャンペーンを行ったりしたことに対して、「悪趣味だ」として眉をひそめる向きが多かった。この国では、長期的なエネルギー政策をめぐって、激しい議論が行われている最中だからである。ドイツの基本電力需要の50%は原子力でまかなわれているが、トリティン大臣が再生可能エネルギーの振興に多額の補助金を投じる以外に、代替エネルギー確保の具体的なスケジュールを示していないことについて、エネルギー関係者の間から不満が表明されている。今年夏には、エネルギー産業の組合の委員長が、シュレーダー政権に脱原子力政策の見直しを進言した他、野党CDU(キリスト教民主同盟)のA・メルケル党首が、政権交代を達成した際には、脱原子力合意を見直す方針を明らかにしている。

* 経済性を強調する電事連

ドイツ電事連(VDEW)は、ドイツが原子力エネルギー抜きで京都議定書に基づく、二酸化炭素排出量の削減目標を達成することは不可能という立場を取っている。VDEWでエネルギー政策を担当しているH・ラート氏は、政治的なイデオロギーではなく、経済性に基づいて原子力、再生可能エネルギー、在来型エネルギーのバランスを、長期的な視野に立って変更するべきだと主張する。「我々は再生可能エネルギーの使用には賛成だが、競争に対抗できる経済性を持たせるべきだ。将来EUは単一の電力市場になり、欧州の全ての国は競争関係に立たされる。そうした中で、ドイツだけが原子力は危険という理由で廃止し、再生可能エネルギーだけに、ジョウロで水を注ぐように補助金を投入するのは誤りだ」。ドイツの電力業界は政権交代によって極端な横揺れをみせない、長期的なエネルギー政策を可能にするために、政府への働きかけを強めている。「歴史的」と評された脱原子力合意だが、今後も二転三転の波乱がありそうだ。