熊谷 徹 発表論文・記事一覧  その3

    
 読売新聞          

番号 発表時期 タイトル 内容
1 2002年
9月30日
主張・提言

米国のイラク攻撃

軍事貢献は日本の国益に
ドイツは、9月11日事件発生直後、米国に強い連帯を示すだけでなく、アフガニスタンに特殊部隊や平和維持軍を派遣し、アフリカ沖の警戒任務のために、戦後最大規模で艦艇を出動させている。シュレーダー首相の対イラク戦争不参加発言は、総選挙で勝利を収めるための、戦術であり、ドイツは選挙後になって、対化学戦装甲車フクスを、対イラク戦開始時にもクウェートに残留させることを決めたり、ドイツ軍兵士をAWACS(空中警戒管制機)に搭乗させたりすることを決めるなど、周辺国への警戒任務を通じて、間接的な軍事貢献を行おうとしている。その背景には、米国が単独主義に走るのを防ぎ、発言権を得るには、軍事貢献が不可欠という、ドイツ政府部内の認識がある。

米国が戦後最大の有事を抱えている今、日本にとっても、対テロ戦争で米国を間接的に支援することが、国益にかなう。日本が軍事貢献を行う上で、テロ対策特別措置法だけでは、不十分であり、憲法の戦争規定の見直しについて、国民を巻き込んだオープンな議論を今すぐ始めるべきだ。平和憲法が崇高な理想に基づいていることは確かだが、日本が民主主義国として認知されている今、憲法を国情に適応させていくことは、恥じるべきことではない。ただし、日本はドイツと異なり、アジアでの信頼醸成措置を長年怠ってきたため、周辺諸国の不信感に配慮して、軍事貢献は単独ではなく、集団安全保障体制の枠内に限るなどの配慮も必要である。