お見合いデートは5分で!

 ミュンヘンのみならず、ドイツの都市ではシングル族が住民の50%以上になって久しい。

忙しい生活の中、シングルたちは家庭を築こうにも、出会いの場がなくて困っている。

重大な一歩を踏み出す以前に、生涯、あるいは人生のある一時期を一緒に過ごす相手になかなか出会えないでいる。

「誰だって好んで独りでいるわけではない」と言うシングルたち。

そんな都会のロンリーハートのために新時代のデートサービスが出現していると聞いて、取材に行ってみた。

 ミュンヘンのあるレストラン。この日は22組の男女が5分づつ相手を替えてご対面。

女性が決まった席に座り、男性は司会者の鐘の音に応じて次の席へと移動していく。

司会者はストップウオッチを片手に鐘を5分ごとに鳴らす。男女ともに番号札を胸につけている。そして用紙に“〇”か“×”を記入する。

両方が“〇”とした場合は主催者が連絡先を教えてくれる。

参加料は日本円にして3000円と割安で、参加資格は50才以下ということのみ。

経歴など問わない現代風の、“不干渉型・お気軽見合システム”ということだ。

それでもそれなりの専門スキルを持ち、それなりの職についた大卒の人ばかりが集まって、会場は常に満員だそうだ。

 この日は女性が1人欠席していたので、コメントを聞く手前、私が空席に座ると、次の男性が移動してきた。

企業分野を専門とする弁護士はなかなかのハンサムで45才。休みの日はヨットに乗るのが好きだとか。初参加したというこの男性は、同じ職業ではない女性とつきあいたい、今日は女優や広告業界の女性たちと話をしたとか。

必ずしも同じ興味や趣味を持っていない人もOKらしい。

「パーティーとちがって、まどろっこしい前置きも必要ないし、“真面目につきあいたい”という目的を持って参加するのだから効率的だ」と言う。

 うーん、なぜこのようなかっこいい、昔でいえば三高の男性がいまだシングルなのかは、5分間ではわからない。

もし私が参加していたらこの人にはとりあえず“マル”としておくだろうか。もっとも、双方がマルを記入しないかぎり、次のデートは成立しない。開口一番、「子供は好きか、結婚しても仕事は続けたいか」などと質問する男性は、ドイツでは全くマルをもらえないだろう。

5分間x22人として、休憩があるとしても2時間ちかくのお見合いでは、お開きになる頃は疲労が目立ってくるのは仕方ない。ニューヨークではこの種のデートは3分ということで、ほとんど第一印象しかわからない。

しかし、これだけ会っても実際にデートにこぎつけるカップルはせいぜい一組とか。やはりシングルからの次のステップは険しそうだ。

(文、福田直子・イラスト、熊谷 徹)

保険毎日新聞 2004年7月6日